すべての財産が遺言によって相続人に分けられていたとしたら、
しかも、遺留分が侵害されていないとしたら、
その遺言通りに遺産は分割されるので、遺産分割協議書は必要ありません。
しかしながら、一部の財産の分割方法しか遺言書に書かれていなかったり、
相続人全員の合意のもと、遺言書とは違う分け方をするような場合、
遺産分割協議書が必要となってきます。
遺産分割協議書の役割はふたつあるといわれています。
ひとつは、契約書としての役割です。
相続人全員の合意で遺産分割協議書は作られますが、のちのち聞いてなかった、
知らなかった、こんなはずじゃなかったと誰かが言い出さないように、
証拠を残すという事です。
言い換えれば、遺産分割協議書とは相続人同士の遺産分割に関する契約書であり
万が一の場合は、裁判の証拠としても利用できるものです。
ですので、全員が署名捺印をすることになっていますし、
印鑑証明書の添付も求められます。
もうひとつは、証明書としての役割です。
銀行口座の名義変更をする、不動産登記の名義変更をする、そんな場面で
遺産分割協議書は「証明書」としての役割を果たします。
実際には、遺産分割協議書がないと銀行口座の名義変更や不動産登記の名義変更、
証券や自動車の名義変更もすることができません。
別に遺産分割協議書を作らなかったからと言って、どこからも文句を言われることはありません。
罰則もありません。
ただ、相続の手続きが(実務上)いっさい進まなくなるのです。
相続手続きが進まないとどうなるか、相続税の申告期限である10ヶ月という期間以内に申告することができずに、
思わぬペナルティを科されたり、様々な相続税の優遇措置を受けられなくなったりします。
それだけならまだしも、泥沼の遺産争族へと発展していく可能性が大です。
相続を争族にしないために、遺産を残す側は誰に何をどのくらい残したいのか、
民事信託や遺言でその意思をはっきりと示す義務があるように感じます。
けっして、遺産分割を残された者になる投げしてはいけません。
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