家族信託の注意点

家族信託も人間が作り出したひつとの制度ですから、パーフェクトではありません。

課題や注意しなければならない点はあります。

 

1.家族信託という制度をまだまだ知らない人が多い。

家族信託という制度は、2007年に施行された改正信託法によって作られた制度で、

施行から11年経過していますが、法律の世界ではまだまだ新しい制度です。

司法書士、弁護士、税理士など、プロの世界でも浸透度は浅く、

金融機関の窓口などでは、制度そのものを知らないという方もいらっしゃいます。

 

2.専門家が少ない。

制度の浸透度が浅いことと合わせて、専門家が少ないことも普及を妨げている要因のひとつです。

家族信託は、何か計算などでバシッと答えがでるような事ではありません。

家族の想いをくみ取りながら作るあげていくモノです。

何かルールに従って決めることではありませんので、

どれだけご家族に寄り添えるかということと、一方では全体を俯瞰してみる

第三者としての視点が重要になってきます。

 

3.家族信託といえども導入費用かかる。

コンサルティング費用、司法書士や公証人へ支払う専門家報酬、登記費用など、

導入時にある程度の費用が必要となります。

信託財産総額の1%~2%前後のケースが多いようですが、

信託財産がある程度の金額になると、導入費用も百万円単位でかかってきます。

 

4.何代にもわたり、資産承継を縛ることになりかねない。

資産承継を何代にもわたって指定することができるので、

相続人の将来を縛ることにもなりかねません。

独善的にならずに、周囲の意見に耳を傾け、

後々、お荷物にならないような家族信託の設計が求められます。

 

5.信託不動産において損益通算ができないケースがある。

信託不動産から出た損失は他の収入との損益通算ができません。

一般の所有権であれば通算できるケースでも、信託不動産の場合は通算できずに、

信託前に比べて、納税額が増える可能性もあります。

 

家族信託はまだまだ若い制度です。

そこが最大の弱点かもしれませんが、導入に積極的な専門家も増えてきています。

これから相続の場面でも、家族信託がポピュラーなものになっていくものと思われます。